里山を夢見るゴルフ場:津カントリー倶楽部

 

三重県津市で約30年続く名門ゴルフ場「津カントリー倶楽部」。ゴルフ場の芝やレストランのオーガニック化、ゴルフコースを使ったウォーキングイベントの開催など、斬新な取り組みを始めている。  

 

「カントリー倶楽部」は公民館

「ゴルフ場を表す言葉に『ゴルフ倶楽部』と『カントリー倶楽部』という言葉があります。一般的に、その違いはあまり知られていませんが、ゴルフ倶楽部はゴルフプレイをするところで、カントリー倶楽部はトランプをする方がいたり、夕方になると散歩に来る方がいたりと、公民館のような、地域の人たちが集まる場所なんです。海外のカントリー倶楽部では、会員の娘さんの結婚式をしたり、奥様の誕生日にレストランを利用したり、ゴルフ以外の時でも利用しています。 うちのゴルフ場に『津カントリー倶楽部』という名前を付けたのも、創業者である父が、『ここを地域の宝物にしたい』という想いがあったからです。」

津カントリー倶楽部 小島しおり社長

 

 そう話すのは、津カントリー倶楽部の代表を務める小島しおりさん。父親である小池建夫理事長が約年前に、松枯れ病で荒れ果てた山を何とかできないか?と友人に相談され、ゴルフ場を始めた。 「ゴルフ場は、広大な土地を使っているのだから、地域の方の協力がないと何もできません。ゴルフをされない方にも利用していただくために、15年位前にランチバイキングを始めました。最近では、お子様連れのママ世代の方々も来てくださっています。 また、2月にはゴルフ場を開放したウォーキングイベントを開催しました。500名以上の方がいらして、会員さんがいつもプレイしているコースをお孫さんと一緒に歩いている姿が印象的でしたね。屋台を出してもらったり、漢方の健康講座を企画したり、映画上映をしたり、色んな方向からみなさんに健康になっていただきたくて。

家族みんなで、ゴルフ場を自由に歩く「とこわかウォーキング」。歩いて、学んで、食べて「健康」を目指すイベントには、老若男女500名以上が集まり、大にぎわい!

 

こういうことを、1日限りのイベントではなく、日常的にできるようにしていきたいと思っています。例えば、お絵かき教室やピアノレッスンがあるとか、ここを地域のカルチャーセンターみたいな形にできないかなって。ヨガをしたり、裸足でお散歩しながらゴルフしたり、そんな利用の仕方も考えています。」  

 

21世紀型の里山

ゴルフ場と聞くと、「環境破壊の代名詞」と感じる方が多いかもしれない。しかし、小島伸浩副社長によると、ゴルフという遊びの原点は「大地に穴を掘って旗を立て、そこを目指してボールを運ぶ」もの。ゴルフ発祥の地と言われているスコットランドのリンクスでは、ゴルフコースはほとんど開発されておらず、自然に近い環境の中でプレイするのだという。

小島伸浩副社長

 

 「ゴルフ場は、乱開発と適地ではない地形に開発したという意味では、自然破壊だけれども、荒れ果てた自然の山林よりも、ゴルフ場の方が地域の生活環境に良い、という論説が出ています。津カントリー倶楽部も、荒れ果てて何も生み出さない困った山を、最大限に有効活用しようとした結果生まれたものです。

切り取った自然の中で人間が遊ぶ。人間と自然が共生するためには、人間がある程度管理する必要があります。その意味では、里山も一緒ですよね。ゴルフ場は21世紀型の里山と言えるかもしれません。地域の中にゴルフ場が一つあると、人が集まれる場所になる。東日本大震災の時も、いくつかのゴルフ場が避難所として開放していました。 妻(しおりさん)が言うように、ゴルフ以外でここに来たくなる取り組みができれば、普段から地域の方々が集まりやすい場所になるし、地域コミュニティの活性化のお手伝いができると思っています。」  

 

ゴルフ場から発信するサスティナビリティ

15年ほど前に、津市内の中央を流れる岩田川の浄化活動をしているボランティア団体が津カントリー倶楽部を訪れてきた。伸浩さんは当時をこう振り返る。 「団体の方がね、岩田川の浄化活動をしているんだけれど、もっと上流からキレイにしようと思って探っていったら、うちのゴルフ場の池に行き着いたそうです。『池にEM(有用微生物群)を流させてくれないか?』と言われました。それがEMとの出会いです。」

ゴルフ場の芝と施設管理に使用するEMの培養を担当している白山茂治さん。微生物への愛がにじみ出ていました。

 

(しおりさん)「父が自然治癒力や養生訓の考えで、ずっとそんな生活をしてきたので、自然のもの(EM)に対する抵抗感は全くありませんでした。EMを知って、1ヶ月もしないうちに比嘉照夫先生(EM開発者)にお会いする機会があり、ゴルフ場の芝管理にもEMを使うことになりました。今はクラブハウスの大浴場やトイレの掃除にもEMを活用しています。

 私はゴルフ場のふもとに住んでいて、ゴルフ場から流れてくる水が入る川がすぐそばを流れているんですが、EMを芝管理に使い出したら、蛍が戻ってきました。岩田川も、昔よりずいぶんキレイになったそうです。」 (伸浩さん)「うちのゴルフ場ではEMを使うことでかなり芝管理の減農薬化に寄与できましたが、今後は完全オーガニック化を目指すことにしました。レストランの食材のオーガニック化も進めています。 ただ単にオーガニック化を進めるだけではダメで、利用者の皆さんたちの意識がそれを良しとしないと、離れていってしまいます。世の中のオーガニック化の流れの中で、賛同者を集めながら、ゴルフ場はどう取り組むかを考えていくことが大事です。この〜年で変わってしまった消費者意識を持続可能なものに戻すには、ゴルフ場はとても有効な情報発信基地になると思っています。」  

 

里山の豊かさと健康をテーマとしたホテル「オーベルジュ玄珠」

津カントリー倶楽部のテーマでもある里山と健康。小島伸浩さんが次に手掛けるのは、岐阜県高山市で2020年8月オープンのホテル「オーベルジュ玄珠」。身土不二の実践と最新のEM技術を活用しています。 オーベルジュ玄珠のwebサイトは[こちら

 


2020年2月取材。「暮らしの発酵通信」三重県版掲載。

Information
津カントリー倶楽部
住所
三重県津市片田長谷町30
TEL
059-237-3580

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

関連記事