仮設トイレから地球へ。〈地球トイレ〉プロジェクトinフジロック’23

乳酸菌や酵母などの発酵型微生物(EM)の力で、トイレの悪臭の元を軽減し、化学薬品に頼らずに環境に負荷をかけない快適な仮設トイレを実現するプロジェクト〈地球トイレ〉。2018年に愛知県で誕生した〈地球トイレ〉が今年、日本一の音楽イベント〈FUJI ROCK FESTIVAL’23〉で実施された。

〈FUJI ROCK FESTIVAL(通称:フジロック)〉は日本の野外音楽フェスの先駆けで、1997年から開催され2023年で26回目の開催となる。新潟県湯沢町の苗場スキー場を会場とし、前夜祭を含め4日間で10万人以上が来場する日本最大規模の音楽イベントだ。大小11のステージ、キャンプサイトや子ども向けエリア、環境エリアや入場ゲートをくぐらずに無料で楽しめるエリアもあり、大都会のごとく山の中が人々で賑わう。

会場に設置された約500基ある仮設トイレのうち、入場ゲート通過後にある最も数が多いトイレエリアと、2つの大きな野外ステージをつなぐ途中にあるトイレエリアの2ヶ所で〈地球トイレ〉が実施された。その数140基。(地球トイレ公式サイト。)

〈地球トイレ〉は暮らしの発酵ライフスタイルリゾートでも館内清掃に使用されている乳酸菌や酵母などの発酵型微生物(EM)を使用し、化学物質に頼らずに快適な仮設トイレを提供している。具体的には、微生物(EM)の発酵液を仮設トイレの汚物タンクと水洗タンクに投入し、発酵液を薄めたスプレイヤーでトイレ室内の消臭と清掃を実施する。

便器の中や外をブラッシングや拭き取りしたり、サニタリー袋の交換やトイレットペーパーの補充、忘れ物やその他ゴミの回収など、発酵液を使用する以外は一般的なトイレ掃除と変わらない。EMの扱いに慣れているプロジェクトメンバー16名とアルバイトスタッフさん数十名で1時間に1回の頻度ですべてのトイレを掃除していく。

フジロックのトイレ事情はネット上でも問題視されていたため、主催者も頭を抱えていた。岐阜県中津川市で開催されている音楽フェス〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN〉で主催者の一人が〈地球トイレ〉のと組みを知り、採用するに至った。(中津川 THE SOLAR BUDOKANでの地球トイレの取り組み経緯はこちら。)

2023年に初めて〈地球トイレ〉がフジロックで実施され、SNS上ではトイレへのコメントが発信されていた。

・「フジロック、洋式トイレ素晴らしい。常にスタッフの方がチェックして清掃して綺麗を保っていた。更にトイレが良くなることを期待したい。」
・「今年は例年よりもトイレの清掃が行き届いていて快適でした。STAFFさん暑い中お疲れ様です。」
・「フジロックのトイレもしかして消臭に力入れてくれてる?去年よりめっちゃ快適になってくれている…それか、私の嗅覚が落ちたか」
・「トイレは定期的に清掃が入るからニオイはあるけど綺麗が保たれてる」
・「トイレ清掃するスタッフ初めて見たけどフジロックの便所はおそらく日本で1番汚いのでヘッドライナー級のギャラをあげてほしいな」

フジロックは世界中からのアーティストが来日しており、来場者の国籍も様々。来場者の方がカタコトの日本語で「ン~、コノシゴト、トイレ、キレイ、スバラシイ!」とトイレスタッフに声をかける姿も。

仮設トイレは音楽フェスや花火大会などだけではなく、災害時には避難所にも設けられるもの。2011年の東日本大震災でも仮設トイレにEMの発酵液が使われていた。「防災訓練のための防災訓練」ではなく、〈地球トイレ〉はイベントを楽しみながら、災害時の仮設トイレへの対応方法を知るきっかけとなることを目指している。


2023年7月取材

 

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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