睡眠は頭と体と心のメンテナンス(知識編)

 

生きるために必須の「睡眠」

私たちは、眠っている間に脳と体を休ませ、脳内の記憶の整理と肉体の修復を行っています。「休息」というものと「積極的な修復」の合わせ技を提供する場が「睡眠」なわけです。 簡単に表現すると飛行機の定期点検のようなもので、不備を修理修復して空の安全(健康)を守るようなことです。眠ることによって脳と体が休むだけではなく、細かなメンテナンスを毎晩完了させています。日中に疲労困憊するといつもよりも眠くなるのが早くありませんか?それは、体から「こんなに駆使しおって!メンテナンスするから早く格納庫(睡眠)へ入れ!」という指令が出ているので、速やかに従ってください。これをしないと「無理」の領域へ入り、メンテナンス不良(不眠)が続けば事故(病気)が起こるのは、ある意味当然かと思います。眠りの本質は何かというと、「寝ないと死ぬ」ということで、睡眠は生存に必須なものなのです。

 

 

学問的にはレム睡眠とノンレム睡眠があるとか、ゴールデンタイムが何時だとか、こうした方が良いとか悪いとか、情報が氾濫しているので右往左往してしまいます。何事もそうですが、原理原則を抑えるというか、物事の本質に近い所から考える習慣をつけた方がいいですね。そうすればテレビで「〇〇が健康に良い」という情報から〇〇がうりきれることもなくなります。情報の波に流されていると、健康には近づくことが難しくなりますね。 単純に「どうしたら睡眠の質を高めることができるか」を考えれば良いのです。その為に必要なことが「人はどのような仕組みで動いているのか」という解剖生理学的視点と知識を要します。嫌がらず、簡単だから読んで下さいね。

 

ヒトは昼に動いて夜に眠る生物

人類は何万年もの間、太陽と共に生活する昼行性でした。当然、それはDNAに書き込まれています。電気ができたのは18世紀半ばであり、夜も明るくなって活動するようになったのは戦後からになります。この程度の期間では、まだまだDNAには書き込みが行われていないでしょう。ですから、太陽と共に起きて、日没と共に休むという日内リズムは万人に備わっているのです。それは自律神経の日内変動と一致します。そのズレの典型が時差ぼけと言えるでしょう。 自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は「緊張状態」で副交感神経は「リラックス状態」。これらの神経がバランスよく働いていることが良い眠りにつながります。不安や緊張で、交感神経緊張の状態が続くと、眠れません。まずは、日中に活動をして日没後はユルユルと過ごすという、太陽に合わせて生活することから始めましょう。

 

 

質の良い眠りとは

質の良い眠りかどうかは、翌朝の状態が「パッと目が覚めて体もスッキリ!」という状態かどうかで判断できます。年齢が上がると、深い眠りの割合が減っていくものです。 朝4時に目が覚めてしまったとしても、頭と体がスッキリしていれば、それは「あなたの体は起きていいですよ」というサインです。逆に、高校生を日曜日に寝させたままにしておくと、夕方に起きてくることすらあります。 年齢だけではなく、生活スタイルや個人差によって睡眠時間はかなり違っています。明石家さんまさんはショートスリーパーとして有名で、日に1〜3時間ほどしか寝ていないとか、ミュージシャンのGACKTさんも3時間だとか。いずれにせよ、「6〜8時間睡眠」という数値に捉われるのではなく、自分に必要そうな睡眠時間の平均を割り出し、起きなければいけない時間に目覚めるには何時に寝るかを定めていきましょう。

 

 

8時間睡眠が自分に適切な睡眠時間だとすると、1日の1/3。80年間生きたら、7年間も眠ることになります。睡眠の質を高めずして健康な人生を語るなかれということなんですね。

 

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「暮らしの発酵通信」特別号掲載

この記事を書いた人

田中佳 医師
ときわ台ときわ通りクリニック 院長/元日本脳神経外科学会認定専門医/日本抗加齢医学会認定専門医/直傳靈氣療法師/整膚師/ISBA(国際シンギングボウル協会)上級認定および認定プレーヤー /ホメオパス(クラシカル)

昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、食や生活習慣、日用品、心の在り方など多岐にわたる方面から健康への道筋を広く発信している。著書、講演、オンライン講座多数。

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