旅と暮らしと地球:暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

※「EMウェルネスリゾートコスタビスタ沖縄ホテル&スパ」は2021年10月に「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」に改称しました。以下の記事は取材当時の名称になっています。

 

沖縄県中部北中城村の小高い丘の上に建つ「EMウェルネスリゾートコスタビスタ沖縄ホテル&スパ」。生ごみをリサイクルし、自社農場を抱え、化学合成洗剤を使用しない客室清掃などに取り組み続けている。 リゾート観光が色強い沖縄で、「Re:Sort(リ・ソート)」という新しい価値を発信する。

 

心と体が喜ぶ食事

「『Re:Sort』とは、Re(再び)+Sort(整える)を意味しています。沖縄はリゾートで来られる観光客の方が多いですが、旅行はとても楽しいけれど、家に帰った時にどっと疲れていたりしますよね。旅の疲れをうちのホテルでリセットして、体の状態を整え、日常生活に元気に戻ってもらう、乗り継ぎ地点のような形でご利用いただければ、と思っています。そのために、現在、『心と体が喜ぶ食事』、『ぐっすり眠れる客室』、『疲れが取れるスパ』、の3つに焦点を当てて、中身を進化させているところです。」

そう話すのは㈱EMウェルネスリゾートコスタビスタ沖縄ホテル&スパ代表取締役社長兼総支配人の西渕泰さん。和食と洋食の2つのレストラン「キタナカガーデン」としてリニューアルオープン。自社農場で採れた無農薬野菜や平飼い無投薬で育った鶏の卵を中心に、体に優しく、心に響く食を提供している。

「ホテルのランチチケットの販売数が県内で1位になったこともあり、地元の方々で常に満席状態です。特に人気なのは野菜。自社農場や地元の無農薬野菜を積極的に使用しています。

もちろん、食品添加物を使用せず、ジャムやドレッシングなども自家製。牛乳やコーヒーひとつとっても、安全でおいしいものを選んでいます。 そんなこだわり食材の食品残渣を発酵させたエサで育った鶏の卵も一押しです。卵臭さがなく、それでいて味がしっかりしていると、ホテル以外のお店でも高い評価をいただいています。今後は、発酵食品も積極的に取り入れて、さらに料理に磨きをかけたいと思っています。」

2019年10月には、暮らしの発酵STOREと暮らしの発酵DELI&CAFEというライフスタイルショップとカフェもオープンした。ショップでは、沖縄県内の物産品だけでなく、全国から選りすぐりの逸品が集まり、発酵する暮らしのアイテムが揃っている。カフェでは美味しくて健康的な食の体験ができる。

 

良質な眠りを誘う発酵空間

眠りは、体を休ませるだけではなく、脳の中の情報整理や精神的安定の意味がある。最近では、脳内に溜まった毒素の解毒作業も睡眠中に行われている、といった研究報告もある。

良質な眠りは私たちの健康にとってとても大事な要素のひとつだ。 いい眠りのための商品や方法はたくさんあるけれど、寝室の空気に着目したことはあるだろうか。私たちは寝ている時にも呼吸を続けていて、常に寝室の空気を体の中に摂り込んでいる。「私たちが口に入れる物の重さを100とした時、食べ物・飲み物はわずか15%。残りの85%は空気」というデータもある。 「どんな空気がいい空気かというと、森の中のイメージです。森の中にはたくさんのいい微生物たちがいて、リラックスできるし、深呼吸したくなりますよね。

一方で、殺菌に注力している病院や、ゴミ置き場などの悪い微生物が多い環境では深呼吸したいとは思いませんよね?その違いです。 日常的なホテルの客室清掃には化学合成物質を使わず、有用微生物(EM)の発酵液で掃除をしています。発酵液の中には生きた善玉菌たちがたくさんいて、汚れ落としや消臭作用もあるため、部屋全体を清潔にし、空気を爽やかにします。

つまり、客室の中が、いい微生物たちがたくさんいる森の中のような状態になるということです。リネンや部屋着の洗濯にも発酵液を使用してもらっています。漂白剤や柔軟剤、蛍光増白剤などを使用していないから、肌にやさしいんです。」 そんな部屋着とベッドに包まれ、森林のような発酵空間にいるからか、「いつも眠れないんだけどこのホテルではよく眠れました」とか、枕のお陰で眠れたと思っているお客様からは「この枕売ってないんですか?」と言われることも多いそう。 「ホテルのコンセプト『Re:Sort』で一番大事なのは、ぐっすり眠れて旅の疲れが残らないことです。今後は珪藻土の部屋を増やしたり、寝具を改良したり、さらに良質な睡眠をご提供していきたいと思っています。」

 

病気にならない暮らし方の発信拠点

西渕さんはホテルの取り組みを横展開していきたいと話す。しかし、それは事業展開による売り上げ向上が目的ではなく、ホテルの社会的役割を果たすためだと言う。

「私たちは、業種で言えばホテル業になりますが、単に宿泊施設の運営をしているわけではないんです。健康問題と環境問題の解決に取り組んでいます。ホテルは日常生活の延長線上。食事、洗濯、掃除、入浴、睡眠。これを役割分担しているだけで、規模は違えど部分ごとに見れば、家庭の中で実践できることばかりなんです。 例えば、ホテルでは食品残渣を発酵させて鶏の飼料にし、その鶏が生んだ卵をホテルで出して循環させています。

家庭の生ごみだって、発酵させれば畑やプランターの肥料になります。客室の清掃も、用途別の合成洗剤を使わなくても、掃除用の発酵液種類でほぼすべて賄えます。

『ホテルでこんな取り組みをしているのはすごいねー』で終わってほしくないんです。宿泊のお客様方にも、このエッセンスをお持ち帰りいただきたい。旅から日常に戻る時の疲れを癒す中継点というだけではなく、その日常が旅の前よりも少しでも良い方向に変わるツールを得られる中継点になっていきたいんです。」 「健康や環境の問題だって、解決する術を知っていれば、大きな安心感につながります。

ゴミが出たら外国に持っていこうとか、食べ物がなかったら輸入すればいいとか、病気になったら病院に行こうとか、外に解決策を求めるのではなくて、自分で解決できれば大した問題にならないですよね。自分一人で解決できなくても、家族単位、地域単位、国単位ならできるんじゃないか?と単位を広げて考えてみるんです。コスタビスタでも、今はホテル内の資源循環にとどまっているので、それを地域に広げ、村民の皆さんに環境講座を実施したり、行政や観光協会と一緒になって、地域の問題解決と地域活性に取り組んでいく予定です。

そうやって、環境問題と健康問題の解決に取り組む人が増えたら、医療費が減り、環境が良くなり、そこにお金がかからなかったら、1人1人がやりたいことに時間とお金を費やせる楽しい社会になるんじゃないかと思います。宿泊のお客様が家庭に持ち帰っていただくこともそうだし、別のホテルがコスタビスタモデルを取り入れたら、一気に世の中が変わると思います。ホテルが、病気にならない暮らし方の発信拠点になります。これは、ホテル創業当初から掲げている未来像で、今もそれは変わっていません。」

 

コスタアースプロジェクト(C・E・P)

コスタビスタ沖縄ホテル&スパでは、地球環境や生物多様性、様々な人や文化を尊重し、だれもが安心して暮らせる持続可能な社会の実現に向け、コスタアースプロジェクト(C・E・P)を立ち上げ、9つのルールを実践しています。

 


2019年9月取材:「暮らしの発酵通信」11号掲載

Information
EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート(旧 コスタビスタ沖縄ホテル&スパ)
住所
沖縄県中頭郡北中城村喜舎場1478
TEL
098-935-1500

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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