心と環境のケアが世界を変える:正木啓さん

デザインの仕事をしながら、NPO活動で児童養護施設の子どもたちの支援をしている正木啓さん。子どもたちの心の問題と環境問題を同時に解決し、地域にも世界にもいい循環を生み出そうとしている。

 

― なぜ子どもたちの支援を?

なんでやろ( 笑)。ある時、ふと、知ってしまったんですよね。別に友達にそういう子がいたとか、自分がそうやったとかではないんやけど。 元々は、社会人向けにコーチングをしていたんです。サラリーマンとして働いていた頃、部下がうつ病になったり、すぐやめてしまったり、自分自身もうつ病になったことがあって、その時に心の事を勉強しました。

習ったことを実践してみたら、部署内の雰囲気が良くなって、売り上げも上がっていきました。心の問題の重要さに気づいて、コーチングトレーナーの勉強をして、社会人向けの個人セッションを始めました。

※その人自身の中に眠っている能力や意識に気づくようにサポートし、個人の成長や組織の発展を促すための人材開発手法。

 

曼荼羅を描いて、自分の癖や潜在意識を見つめなおすというワークショップなども開催。EMをモチーフにして正木さんが描いた曼荼羅(左)。

 

5年前に会社を辞めてデザイナーとして独立したんですが、同時期に施設の子どもたちの現状を知りました。こんなに苦しんでいる子どもたちが世の中に多いんやと思ったら、何かやらないと自分の心が苦しくていられなくなって、子どもたちに対してコーチングをするNPO法人を仲間と始めたんです。

 

― 子どもたちにはどんな変化がありますか?

僕たちは「自己肯定感」という言葉を使っているんやけど、簡単に言ったら、「自分を好きになること」。施設に入っている子どもの約6割が虐待経験者(平成25年時)。

本当やったら、自分を一番大切にしてくれる親から虐待を受けたら、自分を好きになるなんて難しいですよね。大抵の子どもたちは高校を卒業したら就職して施設から出ます。社会に出た時、自分の事が好きかどうかで、人生ってすごく変わると思います。

年8~10回活動をしているNPOポーラスター。キャンプ場などを借りて、コーチングのワークショップの後にバーベキューなどを開催。異なる養護施設の子どもたち同士の交流の場にもなっている。

 

活動を続けていたら、最初は自分の事、全然話さへんし暗かった子が、明るくなったり、自信持って自分の夢を語り出したりするようになるんですよ。

そんなん見てたらめっちゃ嬉しくて。活動仲間の最年少は19歳なんですが、実は彼も施設出身で、僕たちの活動に参加してくれていた子。今は社会人として活動を手伝ってくれています。 NPO法人を立ち上げたのは、実は自分の心の苦しさを解消するためもあったんやけど、今はそれが本当に嬉しくて、楽しいから続けています。

正木さんが支援している子どもたちは中学生~高校生。幼児や小学生にも自己肯定感を高めてもらえるように、とクラウドファンディングで作った絵本。

 

―EMはどこで知ったんですか?

昨年1年間、ほぼ毎月映画「蘇生」と「祈り」の上映会を主催した正木さん。上映会後にEMを配り、地球をキレイにする活動の賛同者の輪を広げた。

 

EMを知ったのは、中崎町のJunさんの所で「 蘇生」というドキュメンタリー映画を観た時。僕らは子どもたちに自信を持って自分の夢を語ってもらう活動をしているんやけど、僕ら大人たちは5年後、10年後の未来を用意してあげられてるのかなって思い始めた頃でした。いくら夢を語っていても、安全な水や食べ物がなかったら生きていけないし、戦争が始まったら元も子もない。

心理的アプローチも必要だけど、それと環境問題は切り離して考えられない事に気づいたんです。 「蘇生」を観て、EMやったら、自分のできることをして、子どもたちが大人になった時に夢をかなえられるような環境を残してあげられるんやないかと思って。 ※地球環境の様々な問題を解決する微生物技術を取り上げたドキュメンタリー映画。EM開 発者の比嘉照夫教授が中心に据えられている。監督は白鳥哲氏。

 

活動にもEMを取り入れてますか?

まだやれていませんが、いつか子どもたちと一緒に、川の浄化活動をしたいなと考えています。 児童養護施設って、地域によっては「子どもたちが住んでいる、よくわからない施設」なんです。グレちゃう子もいるし。そうすると「あそこの子たちは怖いから近づかないように」となって、地域から孤立してしまう。

でも、施設の子どもたちが川の掃除をしていたら、周辺に住む人たちは子どもたちへの見方が変わる。子どもたちも「ありがとう」と言われたら自己肯定感が高まって、地域コミュニティがいい方向に向かう。川がキレイになったら、環境も良くなるし、いいことづくめですよね。 心の問題と環境問題って、今の日本でとても大きな課題だと思うんです。日本は先進国の中で自己肯定感がものすごく低くて、若者の自殺率がすごく高い。

これは関係性があって、自己肯定感が高まれば、自殺者は減ると思っています。 若者の自殺率が減るとか、放射能問題を解決できるとか、これらの大きな課題を自国で解決できたら、日本をモデルに経済発展したいと思っている諸外国のお手本になれると思うんです。同じように悩みを抱えた国を助けてあげることができるし、日本が世界に貢献できる。そんなことを描きながら活動を続けていきます。

 

正木さんは「毎月1日はEMを流す『地球蘇生の日』」というFacebookグループを管理。全国のEMファンたちが、自宅で、職場で、EMを流す様子を報告し合って楽しんでいる。

 


2018年12月取材:「暮らしの発酵通信」9号掲載

Information
NPO法人 児童養護支援協会ポーラスター副理事長 正木啓
その他
NPO法人児童養護支援協会ポーラスター 副理事長
OFFICE Your Design 代表

OFFICE Your Design
https://yourdesign.jp/

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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