ヒトハダ感じてリアルフード:リアルフードあくつ

1000年以上の歴史ある浅間神社の参道・浅間(せんげん)通り商店街で、静岡県内の無農薬野菜や、無添加食材を販売しているリアルフードあくつの圷有恒(ありつね)さん。洋食レストランのシェフだった経験を活かし、原材料と手作りにこだわるお惣菜やお弁当の販売も手がけている。

息子のアトピーがきっかけでいつのまにやら産直レストランに

私は長年洋食レストランを経営していました。ハンバーグやスパゲッティを出したりする普通の洋食屋です。息子がアトピーだったんですが、食の安全に詳しい友達が「これならアトピーでも大丈夫かもよ」と色々な食材を教えてくれました。当時、※ノンホモや低温殺菌の牛乳は珍しかったですね。自分にとって牛乳は牛乳でしかなかったので、牛乳の中にも種類があることは知りませんでした。

豆腐ハンバーグ:レストラン時代から不動の人気メニュー。毎週150個はこねてます。

その頃から、共同購入グループに入って安全な食材を農家さんから直接買うようになりました。最初、その食材は家庭でしか使っていなかったんですが、ある時、農家さんから「レストランやっているなら、僕の野菜使ってよ」と言われ、使い始めることになったんです。そうしたら、農家さんが友達の農家さんを紹介して、次々に農家さんがレストランに直接野菜を持ってくるようになっちゃってね(笑)。松下さんもその中の一人でした。松下さんのお米はうちでも大人気だし、お弁当にも使っていますよ。

※ノンホモ牛乳:脂肪分のホモジナイズ(均質化)処理をしない牛乳のこと。絞ったまま の生乳に、できるだけ物理的なダメージを与えず最小限の加熱殺菌だけをしている。

農家さんから教えてもらったEM。店内からニオイが消えた。

レストランに来る農家さんが増えていったので、そこに集まる人たちで「静岡有機の会」という会を立ち上げて、毎月勉強会をしていました。当時、有機農業関係の会は珍しかったから、農家さんだけではなく、学生とか大学の先生も来ていましたよ。 農家さんが集まるとやっぱり農法の話になりますよね。静岡市にはEMの製造メーカーもあるし、EMを使っている人が多くて。僕は農業のことはわからないから、そういう資材を使っているんだなって程度でした。レストランを閉めてこの店だけにすることにした時に、せっかくならEM商品の取り扱いを始めようと思って、今は販売しています。 EMで一番助かったのは廃水のニオイですね。店の奥に厨房があるんですが、家庭の排水と違って、調理場からの排水は一旦、地下のタンクに溜められます。そこで油が上に浮くようになっているので、その油はすくって別に捨てる必要があるんです。そこからニオイが発生していて、昔は店に入るとそのニオイがしていました。

「うちはお弁当の中の漬物から何から全部作ってるんだよ」と圷さん。カレーのテイクアウトも人気。

  農家さんが「EMはニオイにも効くから」と持ってきてくれるようになり、排水溝に流すようになったら、本当にニオイが無くなりました。以前は気温が高い夏場のニオイが特にヒドかったんですが、気にならなくなりました。コップ1杯のEMを5倍くらいの水に薄めて、その日に出た米のとぎ汁の中に入れておきます。1日発酵させてから次の日に流していますが、もう、習慣になっています。

愛の温度と空気感が伝わるのが「リアルフード」

「リアル」という言葉の中には、オーガニックとか無添加とかの意味も込められているけど、それは一つの要素です。僕が思っている「リアルフード」には、目が覚めるとトントンとまな板の音がして、母親がつくってくれた朝ご飯をガーっと食べてランドセル背負って学校に行く、というような風景や想い出も含まれます。愛情がこもっているとか、その人のためにつくっているとか、温度を感じて、空気を感じることが大切かな。

だから、毎月第一日曜日に開催している「センゲンサンデー」では「自分でつくった野菜を販売する」というのが条件になっています。間に人が入ると、情報がどこまで本当なのかわからないし、ウソだった時に誰が責任を取るの?ってことになる。自分でつくったものを販売すれば、買ってくれた人が老人だったり子どもがいたり、女性だったり男性だったりわかるでしょ。その人が直接食べるから、嘘つけないじゃないですか。売れてお金になればいいや、は「リアルフード」じゃないですね。

あと、玉ねぎやトマトって、一回にそんなに使いませんよね。自分も料理するからわかるけど、2人暮らしなのにでっかい玉ねぎが5つも入っていたら困るでしょ?だから、店で販売している一部の野菜は量り売りしています。大儲けはできないけど、生活できれば幸せだもんね。それも僕にとっての「リアルフード」かな。

静岡県内の農産物にこだわり、そのほとんどが無農薬や有機農家さんから直接仕入れているおいしい野菜。

  今は物流が変化して、インターネットでどこからでもこだわり食材が買える時代だけど、画面の中のつながりは僕にとって「リアル」じゃない。僕はこれからの時代、逆に小さいエリアの方が機能すると思っています。商店街も、周囲の人が来てくれないことには成り立ちません。同じ意識とか趣味とかがある人たちでコミュニティをつくって、それぞれが楽しくやっていたら、楽しい雰囲気が社会全体に醸成されていきますよね。この地域にはまだまだ多くの宝が眠っているので、商店街としても可能性を感じています。

「美人の奥さん追っかけてきたら、静岡に来ちゃったんだよな。」と、 おしどり夫婦♡


2018年9月取材:「暮らしの発酵通信」8号静岡版掲載

Information
リアルフードマーケットあくつ
住所
静岡県静岡市葵区 馬場町91
TEL
054-221-4046
営業時間
10:00~18:00 
定休日
火曜日
その他
オーガニックマルシェ「センゲンサンデー」
毎月第二日曜日9:00~11:00開催
リアルフードあくつ店舗脇にて

オンラインショップはこちら
https://realfood.thebase.in/

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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