ヤソウカフェ:Yamacha(ヤァマチャ)

沖縄県の中部に位置する沖縄市で、「野草」をコンセプトにカフェ ヤァマチャを営む加藤律子さん。彼女がカフェを開くにあたって、人々にどうしても伝えたいと思ったことがあるという。それが、野草の素晴らしさだ。

「自然に野草を取り入れてほしいから。」

「野草って、みんな雑草としか認識してないのが、すごくもったいないと思ったんです。庭とか道端に、食べられたり薬になったりするものが、こんなにあるのに。 福島県で消防士や看護師をしている親戚から、震災の時に流通が止まって薬がないという話を聞いたんです。その時に、野草の知識があったらいろんな場面で代用できたのに…。 やっぱり、知っていることって大事なんだと思います。野草だけじゃなくて、知っているだけで何かの時に役立つことって沢山あるよねって。」

以前は料理の中に野草が入っていることが見た目で分かるように出していた。でも、誰もが野草を喜んで食べるという風にはいかず、試行錯誤の日々が続いた。 「野草をよけてしまって食べない方がいました。せっかくこんなに素晴らしいものなんだから美味しく全部食べてもらいたくて、子どもでも誰でも自然に野草を食べられるように今は野草をペーストにして練りこんでいます。野草が大好きで、野草を食べたい方には物足りないかもしれないけど、ちょっと興味があるとか、知らないっていう方に興味を持って欲しいなって思っています。だから、『どこに野草を使っているの?』『これはどうやって作るの?』って聞いてくれる方にはドンドン教えるし、あそこに行くとなんか体が元気になるよねって思ってもらえたらいいな。」

 

「おいしさと優しさをシェアしたい。」

野草の素晴らしさを伝えるために、自分の持っている情報は何でもシェアしたい。律子さんは、常に野草をもっと広めたいという気持ちに突き動かされている。 「レシピを教えたことで、もう来なくなるお客さんもいるし、『やっぱりここで食べたほうが美味しいわ』と来てくれる方もいます。でも、私はそれでいいんです。レシピや使っている食材だって、農家さんだって、聞かれたら全部答えます。興味をもって、自分でも作るようになったら、その人がさらに広げてくれるかもしれない。私達だけのものにしてしまったら、広がらずに廃れてしまいますよね。」

ヤァマチャのこだわりは、野草だけでなく地産地消の食材にも広がっている。お客さんにどんな人がヤァマチャで使う野菜を作っているかを伝えるのは、加藤夫妻が選び抜いた沖縄の農家さんが、もっと注目されてほしいから。彼らの販路が広がることで生産量も上がり、店で使う食材の仕入れの心配も軽減され、新鮮で美味しい地元野菜で元気になる人が増える。今回、律子さんの紹介で森谷妙子さん(暮らしの発酵人)の取材もさせて頂いた。

「良いことづくめですよね。農家さんにがんばってもらわないと、私達はお店をやっていけないんです。お店で出すことで、お客さんが『こんなに体に優しい食材を使っているから美味しいんだ』と、食や農に興味を持って、その農家さんから野菜を買うようになるかもしれない。そうした身近にある魅力を、店を通して紹介していきたいです。」  

「気づきの場になれたらいい。」

月に一回、ヤァマチャでは「かぁちゃんゆんたく(=おしゃべり)会」という集まりを主催している。食のこと、環境のこと、育児のこと――テーマは特に決めず、母親たちが集まって話をする会だという。律子さんの美味しい料理を囲みながら、子育ての話を共有したり、アーユルヴェーダのヘッドマッサージでリラックス。毎回すぐ予約が埋まるそう。

ヤァマチャを通して生まれる繋がりが、野草のこと、地域のこと、様々なものに気づくきっかけになれば、と律子さんは願う。 「私、自分では全然自然派だと思っていないんですよ(笑)。手作りするし、発酵食品も好きだけど、お酒も飲むし、ジャンクフードもたまに食べるし、よそに行って出されたものは何でも食べます。地球に暮らしていて、海も空もつながっていて、何も体に入れないって、できませんよね。放射性物質だけじゃなくて、化学物質とか、PM2.5とか、農薬とかも。有害物質と言われるものは、沢山あります。あれはダメこれはダメと子どもにダメダメ言っていたり、やっちゃいけないとか、こうじゃなきゃいけないという決まりを作ってしまうと、心のどこかでストレスになって、逆に体に悪いんじゃないかなって。入れないことももちろん大切だけど、排出できる体作りが一番大切だと思っています。」 ストイックになりすぎず、常に自然体でいる律子さん。庭の野草たちのようにイキイキと生きる場所がここにあった。

Information
ヤソウカフェYamacha(ヤァマチャ)
住所
沖縄県沖縄市久保田1-21-12
TEL
098-927-0554
営業時間
11:00~16:00 【定休日】水・木
その他
団体の場合は予約がオススメ!

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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